「先輩」と「私」【桜ゆう】
放課後の美術室には、先輩がキャンバスに色を塗りたくる音と、私が少女漫画を捲る音が交互に響く。少女漫画のページを一つ捲ると、主人公が幼馴染とキスしている見開きが私の目に留まる。ーー先輩はしたことあるのかな、……キス。ーー背中を先輩に預けたまま聞いてみる。「あの、先輩。」「…何。」振り返らずに返事が帰ってくる。心臓が壊れそうなくらいドクドク脈打ってるのが分かる。二人の間に流れた沈黙が心臓の音を先輩に届けてしまいそうでーー「キス…してみませんか?…私と。」